
補聴器外来
補聴器外来
補聴器の主な目的は、難聴による生活の不便を軽減し、日常生活の質を向上させることです。難聴は、先天的なものや耳の病気、また加齢に伴うものがあり、それぞれに対する補聴器の必要性が異なります。特に加齢性難聴は最も一般的な難聴の原因であり、聴力が低下することで会話や音声の理解に困難を感じる方々にとって、補聴器の導入が有効な手段となります。
難聴の原因としては、先天的な要因や、慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎といった耳の病気、または外的な要因(例えば音の過度の暴露)などがありますが、加齢に伴う難聴は年齢を重ねるごとに進行するものです。この場合、高音域の音が聞き取りづらくなるため、特に女性や子供の声、電話の音、アラームなど高音域を多く含む音に対して困難を感じやすくなります。
聴力検査を行い、その結果を基に補聴器を選んだり、購入を勧めたりすることがありますが、その多くは「聴力検査」だけで決定される場合が多く、これが一因となって「購入したけれど使っていない」「自分には合わなかった」といった結果になることも少なくありません。なぜなら、補聴器は単に音を増幅するだけではなく、個々の聴力の特性や生活環境に合わせた調整が必要だからです。
当院では、より詳細な聴力検査を行い、補聴器の必要性をしっかりと判断します。その後、聴力に合った補聴器の選定をサポートし、購入後も適合判定医によって、補聴器がご自身の聴力にきちんと合っているかどうかを検証します。これにより、補聴器の使用が最も効果的で、実際に生活の質が改善されることを目指します。
聴力は一般的に30代後半を過ぎた頃から徐々に衰え始め、特に高音域の聴力が低下します。人間の耳は、音を高い音域から低い音域にかけて感じ取るため、高い音が聞きづらくなると、特に「母音」より「子音」の聞き取りにくさが目立つようになります。例えば、「広い」と「白い」、「佐藤さん」と「加藤さん」などの発音が似ている言葉では、言葉の間違いが起きやすくなり、会話に支障をきたします。これにより、家族や友人とのコミュニケーションに困難を感じる方が多くなります。
年齢による聴力の低下は、一般的に年齢が進むごとに徐々に進行します。40代や50代になると、自分の聴力が低下してきたと感じる方も増えてきますが、その段階で補聴器を検討することは非常に重要です。聴力が低下しても、補聴器を使用することで、今まで聞き取れなかった音が再び聞こえるようになり、生活の質が大きく向上します。
また、聴力低下には加齢性以外にも疾患が関与している場合があります。例えば、内耳や中耳に問題がある場合、治療を行うことで聴力が回復することもあります。したがって、聴力が低下してきた場合、早期に専門の耳鼻科での診察を受けることが推奨されます。治療により聴力が回復する場合もあれば、治療を行っても聴力が元に戻らないこともあります。その場合は、補聴器を使って聴力を補うことが必要となります。
補聴器を使用するためには、まずは聴力検査を受けて、その状態に合った補聴器を選定する必要があります。
補聴器装用の流れは以下の通りです。
補聴器には様々な種類があり、形状や機能、価格によって異なります。また、音の処理方法によって大きく「アナログ補聴器」と「デジタル補聴器」に分けることができますが、近年はテクノロジーの進歩からほとんどが「デジタル補聴器」です。デジタル補聴器は、音をデジタル信号に変換し、音の種類や環境に応じて細かく調整できます。これにより、雑音や音質が改善し、さまざまな環境でより快適に使用することができます。価格は高めですが、調整しやすいため、より個別のニーズに対応できます。
さらに、補聴器は「耳掛け型」「耳あな型」「ポケット型」など、装着方法によっても種類があります。自分の聴力や使用環境に合った補聴器を選ぶことが、快適な生活を実現するためには重要です。
補聴器を装着することで、すべての音が完璧に聞こえるわけではありません。しかし、訓練により今まで聞こえなかった音が聞こえるようになり、会話や音楽、テレビの音などがよりクリアに感じられるようになります。それによって、日常生活の中での不便が軽減され、より快適な生活が送れるようになります。
補聴器が最初からうまく調整できる方もいますが、難聴が高度だと、音がうるさく響いて不快に感じてしまうことや、音としては聞こえるけど内容がわからない、といった状況となり、補聴器を使いこなせない方も少なくありません。基本的には補聴器の調整はリハビリテーションの一種です。2~3カ月時間をかけて、検査で確認しながら丁寧に調整します。そうすることで、できるだけ不快音に脳が慣れていき、判別できる言葉が増えていきます。
補聴器は早い段階で使用した方が、習得までがスムースです。聞こえづらさを感じてきたら耳鼻咽喉科に受診しましょう。
当院には言語聴覚士も在籍しており、より専門的な聞こえの相談が可能です。
聴力検査の結果、身体障害者(聴覚障害)の認定基準に該当すると、お住まいの自治体から補聴器購入費の一部が支給されます。申請には、自治体で申請書を受け取り、受診時に持参してください。当院で診断書を作成後、申請手続きを進めることができます。
また、補聴器の購入費用は医療費控除の対象となります。控除を受けるには、日本耳鼻咽頭科学会が認定する補聴器相談医の診察を受け、必要な書類を作成してもらった上で購入する必要があります。