
耳の内視鏡手術
耳の内視鏡手術
近年では内視鏡技術の発展により、より低侵襲で視野が広く確保できる内視鏡手術が注目されています。耳の内視鏡手術(経外耳道的内視鏡下耳科手術:Trans Endoscopic Ear Surgery, TEES)とは、内視鏡を用いて行う耳の手術でほとんどすべての操作を外耳道から行います。
従来から行っている中耳手術では、耳の後ろを約6~8 cm切開し、耳介・外耳道・鼓膜を順に持ち上げて、顕微鏡下に手術を行いますが、TEESでは外耳道の中に約1 cmの切開と、側頭筋膜や耳介軟骨を採取する場合には、耳の後ろに約2 cmの切開で手術を行います。TEESは、顕微鏡下手術よりも切開創が小さく、低侵襲な手術方法と考えます。当科で行うTEESは、早期の社会復帰を目指しており、術前の剃(てい)毛(もう)は原則不要で、手術翌日から洗髪ができます。
当院におけるTEESの適応は、鼓室に限局した病変としており、進行例では従来から行っている顕微鏡下手術を行っています。
耳介の後ろを切開が最小限で、ほとんどの操作を耳の穴からアプローチできるため、術後の痛みや腫れが少なく、日帰り手術が可能です。また、術後の回復が早いのが特徴です。
経外耳道的内視鏡下耳科手術は、片手で内視鏡を持ちながらもう一方の手で手術を行うため、専門的な経験と技術が求められます。
鼓室形成術とは、中耳の病変を取り除き、音の伝わりを再建(伝音再建)する手術です。中耳の病変を取り除くときに、耳小骨を一度外すことがあります。伝音再建では、外した耳小骨を削りなおして使用することが多いですが、耳小骨の破壊がすすんでいる場合には、伝音再建の材料として使えないため、軟骨や人工骨を使用して音が伝わる仕組みを形成します。鼓膜からの音の振動を伝えるために作る支柱を「コルメラ(柱)」と呼びます。鼓膜の病変を取り除いた場合には、軟骨や筋膜を移植します。コルメラや移植した組織が安定するように、血液製剤の一種であるフィブリン糊で固定します。耳の中にはしばらくゼラチンスポンジを充満させて創部を保護します。
主な適応疾患:中耳真珠腫、慢性中耳炎、耳小骨離断症、耳小骨奇形など
鼓膜の穴を筋肉の膜や結合織を用いて閉鎖する手術のことを言います。手術当日に麻酔のガーゼを挿入します。鼓膜の穿孔縁を取り除きます(新鮮化)。耳の後ろを約2cm切開し、筋膜や皮下の結合織を採取します。採取した組織を鼓膜穿孔縁に移植し、フィブリン糊で固定します。耳の中にはゼラチンスポンジを充満させて創部を保護します。耳の後ろの切開した傷は、吸収糸で縫合しますので術後に抜糸の必要はありません。
主な適応疾患:慢性中耳炎
再生治療のひとつになります。炎症した鼓膜を切除し、リティンパ®を染み込またゼラチンスポンジを中耳に充満させ、血液製剤の一種であるフィブリン糊で固定します。4週間ごとに計4回まで実施することがあります。
主な適応疾患:慢性中耳炎
当院では、前述した術式以外にも様々な疾患に対して耳の内視鏡手術を行っています。また、進行した病変には、耳後部切開による顕微鏡手術も対応可能です。 ご希望の方は提携病院での入院治療をご案内します。詳しくは担当医にご相談ください。