ドクターインタビュー
ドクターインタビュー
耳鼻咽喉科 吉田クリニック
院長 吉田尚生 先生
関西エリアの住みたい街ランキングでは、常に上位にランクされる西宮市。「耳鼻咽喉科 吉田クリニック」は2025年5月、阪急今津線「門戸厄神駅」徒歩1分、ほぼ駅前といえる医療モールに開設された。院長の吉田尚生先生にとっては、幼少期に馴染んだ帰郷開業といえる。その特徴は、一般的な耳鼻咽喉科にとどまらない、耳科での日帰り可能な経外耳道的内視鏡下耳科手術の実践で、これのできる耳鼻咽喉科クリニックは、全国的にもきわめて数少ない。地域に根差しつつ、高度な医療を提供できることが、当院の特徴だ。


お祖父上が耳鼻咽喉科の開業医だったということですが、吉田先生が耳鼻咽喉科に進まれたことにも、何らかの影響があったのでしょうか。
祖父や他の親族が耳鼻科クリニックを営んでいましたので、子どものころは風邪をこじらせるなど患児の立場からも身近な存在でした。大学時代の私の成績は概ね上位にいたものの、耳鼻科だけは苦手で、卒業後真っ先に捨てたのも耳鼻科の教科書でした(笑)。卒業時、漠然と内科を志望していたのですが、関西電力病院での初期研修で外科部長から外科の信念を徹底的に叩き込まれました。外科への興味が湧いてきたところで、耳鼻咽喉科部長から声を掛けていただきました。「君のおじいさんが取り組んできた医療を一度見てみてはどうか」と言われたのです。それまでの私の中にあった、子どもの風邪や中耳炎を診る耳鼻科のイメージがそこで一変しました。耳鼻科は生粋の外科系診療科だったのです。私が進路を決めたのは、そこからですね。
一人の担当医が検査から診断、内科的治療、外科手術まで担当するというイメージでしょうか。
そうです。そこが他の診療科との違いで、耳、鼻、喉それぞれにいろいろな検査、異なる治療アプローチがあります。種類や進行度に応じて手法を使い分けなければならない頭頸部がんの手術も相当件数を執刀してきましたが、そうした広域に及ぶ医療は、医師として一生やっていても飽きないだろうなと思ってきました。
高齢化が背景にあるのでしょうが、難聴者が増えていると聞いたことがあります。医療現場においてもその実感はありますか。
病院勤務医のころは、やや多いかなという感覚でしたが、開業してみると難聴の方の多さに驚きました。患者さんの3割程度が80代の方だと思われますが、難聴の症状は、認知症とも関わりが深い分野ですので、啓蒙も含めやり始めたところです。
約20年間、基幹病院で勤務され、指導者の立場でもあった先生が、開業を意識されたのはどういうきっかけだったのでしょうか。
開業はあまり考えていませんでした。ただ、定年までの折り返しの年齢に差し掛かり、耳鼻咽喉科医師としての将来像を考えたときに、専門性を発揮しようとするほど、仕事環境の選択肢が限られてきます。定年後の開業というのも現実的ではなく、だったら今が開業に適齢なのかなと思いました。
西宮市は先生の出身地なのですね。
幼稚園、小学校時代をここ門戸厄神の近隣で過ごしました。クリニックの場所も、昔は中華料理レストランで、よく家族で食事をしたものです。開業するのなら生まれ故郷で、と考えていましたので、この医療モールのテナント募集情報をいただいたとき、真っ先に手を挙げました。
開業における先生の強みや他院との差別化は、やはり日帰り手術ということになりますか。
阪神地区での、本格的なサージクリニックは、おそらく当院が初めてではないかと思います。勤務医時代からずっと耳も鼻も手術をしてきたわけですが、経外耳道的内視鏡下耳科手術(TEES)に関しては、実施できる医療機関が限られています。地域の手術ニーズがどの程度あるのかは未知数ですが、日帰り手術はもっとも大きな強みだと思っていますし、当院で実証していくことが私の医師生活20年間の集大成だと思っています。
従来の顕微鏡手術では通常1週間程度の入院というイメージがありましたね。
TEESは外耳道から内視鏡を挿入して行いますが、患者さんには痛みが少なく低侵襲であるという特徴のほか、神経を傷つけるリスクが低いことも報告されていて、日帰りを可能にしたのです。そこで問われるのが術者の手技です。現在、十分なTEESの研鑽を積んだ医師は、大学病院や総合病院に集中していて、開業医となるとほんの一握りではないかと思います。
耳鼻科では、子どもの受診者も少なくありません。そうしたときに、保護者との信頼関係を築くコミュニケーションが大事になりますね。
まず、説明を重視するということです。お子様が自分の症状を正しく訴えることは難しいですから、親御さんから見ての経過や心配事に傾聴し、何が原因でこのような症状を来しているのかを丁寧に説明するようにしています。これが大事なのです。多くの場合、どの医療機関にかかっても、治療方法はガイドラインに従ったもので、大きな違いはなく、使える薬も限られてきます。そこに差別化があるとしたら、皆さんが理解・納得できる分かりやすい説明ということになります。
現在のスタッフ構成はどうなっていますか。
常勤・非常勤合わせて17名の大所帯です。内訳は、パート看護師5人、診療補助3人、受付事務8人、言語聴覚士が1人となっています。皆さん優秀な方にお集まりいただきましたが、言語聴覚士は国内指折りの検査件数を経験してきた方です。私の診療方針に共感いただき、週1日勤務していただいています。
それほどの言語聴覚士がいらっしゃると、少なくとも補聴器外来は相当な強みになりそうですね。
はい。すでに活発に稼働しています。私は補聴器相談医ですし、補聴器適合検査の資格者でもあります。補聴器メーカーは数多あるわけですが、私と聴覚の専門家、認定補聴器専門店の三者でしっかりとした調整ができると、リハビリも順調に進みます。実際、他の店舗で補聴器を購入された方に対し、当院での検査結果を基に調整したことで、聞こえが修正されたケースが多く出てきています。要は、正しい調整ができるかどうかですし、そのことを広く知っていただきたいと思っています。
スタッフのスキルアップやチームパフォーマンス向上のために実施されていることはありますか。
看護師に関しては聴力検査など特殊な検査を行うことになりますので、今回チームに加わっていただいた言語聴覚士が中心となり、かなりの時間をかけて研修に取り組んでいただきました。私も時間を見つけては、看護学校や全国の看護師を対象に講義をしていた当時の資料を使って耳鼻科疾患の説明をしています。手術は少し特殊な勉強になりますので、大阪赤十字病院と関西電力病院の協力をいただきレクチャーを受けるほか、実際に手術を見学させていただくなどをしています。

受付事務の方はいかがでしょうか。
受付事務は、一定数の実務経験者を採用できました。教育に重点を置く考えから、必ず経験者と未経験者がペアとなりレセプト業務等の指導を始めています。未経験者にはスキルアップとともに、医療事務認定実務者の資格取得にもチャレンジできるよう、教材を取り揃えて実務に活かしていただくようにしています。あとは当人の興味と努力次第なのですが、学べる環境は常に提供していきたいと考えています。
手術を迎える準備は万端ですね。
手術は今年の7月28日から、最初は週1件ペースからの稼働となります。スタッフの過度なストレスにも配慮しながら、順次増やしていく考えです。
ということは、すでに手術予約を受け付けているということですか。
手術は数件の予約が入っています。当院で検査を受けられ、手術を選ばれた患者さんのほか、私のことを調べて遠方からお越しいただく方。あとは、病院からの紹介者もいらっしゃいます。
内覧会での来場者が2日間で約600人と、大盛況だったようですね。
そうでしたね。同じモールに出店した調剤薬局さんのほか、関係者皆さんの協力が得られたこと。また、2階に開業した内科クリニックとオープンが重なったことも大きかったのではないでしょうか。600人という来場者数もそうですが、多くの方々から、「この地域に耳鼻科ができて良かった」というお声がけをいただけたことを嬉しく思います。

最後に、吉田先生から地域の方々へのメッセージをお願いいたします。
当院は「耳」「鼻」「喉」の疾患について、常に高い水準の医療を目指し、患者さんにご提供する、地域の耳鼻咽喉科インフラでありたいと願っています。小さな不調や悩み、不安など、どんなことでもお話をお聞かせください。スタッフ一同、早期に解決できるよう、最善を尽くしてまいります。
取材・文責
小川孝男
